第7回【イエサポ住まい支援コラム】

居住支援

長尾 祐太

筆者 長尾 祐太

不動産キャリア19年

【イエサポ住まい支援コラム】第7回

高齢者の一人暮らし、大家さんは何を不安に感じている?

「高齢だから貸せない」の背景にある本当の理由

前回の振り返り

第6回では、

「保証人がいないと賃貸住宅は借りられない?」

というテーマを取り上げました。

保証人がいない。

身寄りがない。

保証会社の利用も難しい。

そんな場合でも、

最初から住まいを諦める必要はありません。

大切なのは、

「誰が保証人になるか」だけではなく、

何かあったときに誰が関わるのか。

その支援体制を整えることだとお伝えしました。

今回は、その続きとして、

高齢者の一人暮らしを大家さんはなぜ不安に感じるのか

について考えていきます。


「高齢だから貸せません」と言われる背景

年齢だけが問題とは限りません

住まい相談の現場では、

「年齢を伝えたら断られました」

という相談を受けることがあります。

70代だから。

80代だから。

一人暮らしだから。

そう聞くと、

「高齢だから断られた」

と感じてしまうかもしれません。

しかし、

実際に大家さんと話をしてみると、

年齢そのものよりも、

入居後に何か起きたときの不安

を抱えていることが多くあります。

例えば、

  • 室内で倒れたらどうするのか

  • 長期間連絡が取れなくなったらどうするのか

  • 認知症が進んだらどうするのか

  • 家賃の管理が難しくなったらどうするのか

  • 亡くなった後の荷物は誰が片付けるのか

  • 親族がいない場合、誰に連絡するのか

こうした不安です。

つまり、

「高齢者に貸したくない」

というより、

「何かあったときに大家さんだけで対応できるのか」

という問題なのです。


実際にあった80代男性のケース

大家さんが心配していたのは「その後」でした

以前ご紹介した、

住所不定だった80代男性のケースがあります。

相談を受けた時点で、

住所なし。

携帯電話なし。

所持金なし。

保証人なし。

さらに、

保証会社も利用できませんでした。

本人は、

今夜寝る場所すらない状況です。

行政も支援したいと考えていました。

しかし、

大家さん側にも当然不安があります。

実際に出てきたのが、

「家賃は払えるのか」

そして、

「亡くなった後は誰が対応するのか」

という声でした。

これは、

大家さんにとって非常に現実的な問題です。


大家さんの不安を「偏見」で終わらせない

貸す側にも守るべき生活があります

高齢者が住まいを断られた話を聞くと、

「高齢者だから差別されている」

と思われることもあります。

もちろん、

年齢だけで一律に判断されることは望ましくありません。

ただ、

居住支援の現場では、

大家さん側の事情にも向き合う必要があります。

大家さんにとって賃貸住宅は、

大切な資産です。

家賃収入で生活している方もいます。

ローンを返済している場合もあります。

そのため、

何か問題が起きたとき、

「全部大家さんで対応してください」

では、

受け入れに慎重になるのも無理はありません。

だからこそ、

借りる側だけではなく、

貸す側の安心も一緒につくる

という考え方が重要です。


大家さんが求めているのは「一人で抱え込まなくていい安心感」

支援者の存在が見えるだけでも変わることがあります

私たちが社会福祉協議会様での講演でもお伝えしたことがあります。

大家さんが求めているのは、

必ずしも「絶対に問題が起きない保証」ではありません。

むしろ、

「何か起きても、一人で抱え込まなくていい」

という安心感です。

例えば、

  • 支援機関が間に入る

  • 緊急時の連絡先を決めておく

  • 入居後も状況を共有する

  • 誰がどのように支援しているか伝える

こうした体制があることで、

大家さんの心理的な負担を軽くできる場合があります。


一人暮らしの高齢者で特に心配される「死亡後」

入居するときだけでなく、その後まで考える必要があります

高齢者 賃貸の問題で、

避けて通れないのが、

入居者が亡くなった後の対応です。

例えば、

身寄りのない高齢者が室内で亡くなった場合、

誰が手続きをするのでしょうか。

残された家具や荷物は、

誰が片付けるのでしょうか。

誰が部屋を明け渡すのでしょうか。

こうした問題は、

高齢者を受け入れる大家さんにとって、

大きな不安になります。

講演資料でも、

身元保証、死後事務、残置物処理、見守り体制、緊急時対応

などは地域課題として取り上げました。

そして、

身寄りのない高齢者を、

不動産会社だけで支えることはできません。

福祉、医療、行政、地域が連携して、

入居中だけでなく、

その先まで支える仕組みが必要です。


「孤独死が怖い」から「見守れる仕組み」へ

リスクをゼロにすることはできません

高齢者の一人暮らしで、

大家さんからよく聞く不安の一つが、

孤独死です。

ただ、

これは高齢者だけの問題ではありません。

誰にでも、

病気や事故は起こり得ます。

重要なのは、

リスクをゼロにしようとすることではなく、

異変に早く気付ける仕組みをつくること

だと私たちは考えています。

例えば、

福祉サービスを利用している。

定期的に家族や支援者が訪問する。

地域包括支援センターとつながっている。

見守りサービスを利用する。

困ったときの連絡先が決まっている。

こうした情報が大家さんにも共有されているだけで、

感じる不安は大きく変わります。


福祉サービスが入っていれば絶対安心?

重要なのは「情報がつながっていること」

ただし、

福祉サービスを利用していれば、

すべて安心というわけでもありません。

以前支援した80代男性は、

生活保護を受給し、

訪問介護も利用していました。

それでも、

家賃滞納やゴミ屋敷の問題が発生し、

退去寸前まで状況が悪化しました。

健康面の支援は入っていても、

住まいに関する情報が十分につながっていなかったのです。

この経験からも、

支援機関が存在すること以上に、

必要な情報が必要な人へつながっていること

が重要だと感じています。


高齢者本人にも早めに考えてほしいこと

元気なうちだからできる準備があります

「今は元気だから大丈夫」

と思われる方も多いと思います。

もちろん、

元気に生活できていることは何よりです。

しかし、

元気なうちだからこそ、

準備できることがあります。

例えば、

  • 緊急時に誰へ連絡するのか

  • 入院した場合はどうするのか

  • 家賃管理をどうするのか

  • 介護が必要になったら誰に相談するのか

  • 身寄りがない場合の対応をどうするのか

こうしたことを、

住まいを探す段階から少しずつ考えておく。

それだけでも、

大家さんへの説明は大きく変わります。


支援者の方へ|「高齢だから断られた」で終わらせないでください

大家さんの不安を聞くことで解決策が見える場合があります

社会福祉協議会、

地域包括支援センター、

ケアマネジャー、

相談支援専門員、

病院のMSW、

行政職員の方から、

高齢者の住まい相談をいただくことがあります。

その際、

「高齢なので物件がありません」

で終わらせてしまうのではなく、

大家さんは何を不安に思っているのか

を確認してみることが重要です。

緊急連絡先なのか。

家賃なのか。

見守りなのか。

死亡後の対応なのか。

不安の中身が分かれば、

対応できる方法が見えてくることがあります。

そこで、

住宅セーフティネット制度や、

居住支援法人との連携も選択肢になります。


居住支援法人が「貸す側」と「借りる側」をつなぐ

私たち**ホームサポート(イエサポ)**は、

大阪府指定の居住支援法人として、

貝塚市・岸和田市をはじめ、

泉州地域で住まい相談を受けています。

実際の支援では、

住まい探しだけではありません。

大家さんとの交渉。

保証会社との調整。

生活保護申請への同行。

病院や相談支援専門員との連携。

見守り調整。

緊急連絡先対応なども行っています。

大切なのは、

大家さんに高齢者を無理に受け入れてもらうことではありません。

また、

高齢者側だけの希望を通すことでもありません。

双方が安心できる方法を一緒に考えること。

それが居住支援の役割の一つだと考えています。


まとめ|高齢者が問題なのではなく「一人で抱える仕組み」が問題です

高齢者の一人暮らしに、

大家さんが不安を感じることがあります。

しかし、

その不安の多くは、

年齢そのものではありません。

何かあったとき、

誰に連絡すればいいのか。

誰が対応するのか。

亡くなった後はどうするのか。

それが分からないことへの不安です。

だからこそ、

高齢者が安心して暮らせる住まいを増やすには、

大家さんだけに責任を負わせない仕組みが必要です。

行政。

福祉。

医療。

地域。

不動産会社。

居住支援法人。

それぞれが役割を持ってつながることで、

「高齢だから貸せない」から、「この体制なら安心して貸せる」へ。

少しずつ変えていけるのではないでしょうか。


「これって相談していいのかな?」

と思われたら、

住まいを失ってからではなく、

住まいを失う前にご相談ください。

早い段階であればあるほど、

一緒に考えられる選択肢は広がります。

もしこの記事を読んで、

「このケースも相談できるかな?」

と思われた方は、

お気軽にお問い合わせください。

高齢者ご本人だけでなく、

ご家族、支援者の方、

大家さん、管理会社からのご相談も、

まずは状況を整理するところから一緒に考えていきます。


次回予告|第8回

「退院することになったけれど、帰る家がない。そんなときどうする?」

病院を退院できる状態になった。

しかし、

自宅に戻れない。

賃貸住宅もない。

保証人もいない。

このような場合、

医療だけでは解決できない「住まいの問題」が出てきます。

次回は、

退院支援と住まい探しの関係

について、

病院のMSWや福祉関係者との連携も含めて、

実際の居住支援の現場からお伝えします。

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