第11回【イエサポ住まい支援コラム】
【イエサポ住まい支援コラム】第11回
DVで家を出たい。でも行くところがない
安全な避難と、その後の住まいを同時に考える大切さ
前回の振り返り
第10回では、
「ゴミ屋敷になったら退去するしかない?」
というテーマを取り上げました。
ゴミ屋敷や家賃滞納は、
本人だけの問題として考えるのではなく、
生活全体の変化を見る必要があります。
実際の支援事例からも、
福祉サービスが入っていても、
住まいに関する情報がつながっていなければ、
退去寸前まで問題が進むことがありました。
今回は、
まったく違う事情から、
突然住まいを失う可能性があるケースです。
テーマは、
DVからの避難と住まいの確保
です。
「家を出たい。でも行くところがない」
DV避難では住まいの問題が突然起こります
DV被害に遭っている方からすると、
今いる家を出ることは、
単なる引っ越しではありません。
命や安全に関わることがあります。
しかし、
実際に家を出ようと思ったとき、
次のような問題が出てきます。
今夜泊まる場所がない
所持金が少ない
仕事をしていない
保証人がいない
子どもと一緒に住める場所が必要
相手に居場所を知られたくない
すぐに賃貸住宅を契約できない
講演資料でも、
「DVで避難したい」
という状況は、
居住支援につながる相談例として紹介しました。
住まいが完全になくなってからではなく、
「ここを出なければならないかもしれない」
という段階から相談できます。
DV避難で最優先なのは「安全」です
まず命を守る場所が必要です
DVから避難する場合、
最も重要なのは、
安全を確保することです。
危険が迫っている場合には、
新しい賃貸住宅探しよりも、
まず安全な場所へ移ることが優先されます。
講演では、
一時的に命と安全を守る場所と、
その後の暮らしを立て直す居住支援は、
役割が違うこともお伝えしました。
一時避難先は、
「今の危険から離れるための場所」
です。
一方で居住支援は、
「その後の生活を立て直す住まいを確保するための支援」
です。
どちらか一方だけでいいのではありません。
両方が必要になるケースがあります。
実際にあったDV母子世帯のケース
40代女性と子ども2人からの住まい相談
実際に私たちが関わったケースです。
対象となったのは、
40代の女性と、
お子さん2人でした。
DV被害があり、
仕事もしていませんでした。
さらに、
所持金がなく、
保証人もいない状況でした。
安全のためには、
今の環境から離れる必要があります。
しかし、
新しい住まいを借りようとしても、
一般的な賃貸契約では、
簡単に進められる状況ではありません。
「安全確保」と「住居確保」は同時進行です
逃げた後の暮らしまで考える必要があります
このケースでは、
大家さんへの事情説明や、
契約費用の分割について調整を行いました。
そして、
新しい住まいを確保しました。
ここで大切なのは、
「逃げられたから終わり」
ではないということです。
危険な環境から離れることは、
とても大きな一歩です。
しかし、
その翌日から生活が始まります。
子どもの生活。
食事。
生活費。
学校。
仕事。
行政手続き。
地域とのつながり。
住まいが決まってから、
次の課題が見えてくることがあります。
住まいが決まってから本当の生活再建が始まります
新しい家があれば、すべて解決するわけではありません
DV避難後には、
孤立してしまうことがあります。
これまでの人間関係から距離を取ることで、
安心を得られる一方、
相談できる人が少なくなることもあります。
生活費や就労の問題もあります。
子どもがいる場合には、
新しい環境での子育ても始まります。
そのため、
住まいが決まった後にも、
継続した支援が必要になります。
私たちは、
「部屋に入居できたから支援終了」
とは考えていません。
住まいは、
生活再建のスタート地点だからです。
DV避難には「住まいを探す難しさ」があります
普通の引っ越しとは条件が違います
一般的な引っ越しなら、
時間をかけて物件を探せます。
内覧をして、
家族で相談して、
引っ越し日を決めることもできます。
しかし、
DVからの避難では、
そうはいかない場合があります。
急いでいる。
相手に知られたくない。
お金がない。
仕事を辞めざるを得ない。
保証人を頼めない。
こうした事情が重なるからです。
そのため、
単に物件情報を渡すだけでは、
住まいにつながらないケースがあります。
大家さんにも事情を理解していただく必要があります
「問題がある人」ではなく「支援が必要な状況」です
賃貸住宅を貸す大家さんからすると、
無職。
保証人なし。
所持金が少ない。
という条件だけを見れば、
不安を感じることがあります。
その気持ちも、
無視することはできません。
だからこそ、
居住支援では、
本人の事情を必要な範囲で整理し、
「なぜ今この状況なのか」
そして、
「入居後はどのような支援につながるのか」
を説明することが大切です。
大家さんに、
すべてのリスクを負ってもらうのではありません。
行政や福祉、
居住支援法人などが関わり、
大家さんも一人で抱え込まなくてよい環境をつくります。
地域課題として感じた「一時避難先の不足」
今日逃げたい人が、今日行ける場所
この事例を通じて感じた課題があります。
それは、
一時的に避難できる場所の不足
です。
講演資料でも、
DV母子世帯の事例から、
民間シェルターや一時避難先の不足を、
地域課題として取り上げました。
長期的な賃貸住宅を探すにも、
どうしても時間が必要です。
その間、
安心して過ごせる場所が必要になります。
「今夜どこで寝るのか」
と、
「これからどこで暮らすのか」
この二つを、
地域全体で考えなければなりません。
支援者の方へ|「住まいは後で」と考えないでください
安全確保と同時に住まい相談を始めることが大切です
社会福祉協議会。
行政。
相談支援専門員。
病院のMSW。
子育て支援関係者。
DV相談に関わる支援者。
こうした方が、
最初に相談を受けることがあります。
もちろん、
危険な状態であれば安全確保が最優先です。
しかし、
安全な場所へ移った後、
次の住まいが必要になります。
だからこそ、
「避難が終わってから不動産会社を探す」
のではなく、
可能であれば、
安全確保と並行して、
住まいについても早く相談してください。
住まいを失う前から相談できることは、
住宅セーフティネット制度の大切な考え方の一つです。
子どもがいる場合は「家」だけでは決められません
その後の暮らしまで考える必要があります
DV母子世帯では、
本人だけではなく、
子どもの生活も考える必要があります。
例えば、
学校や保育。
通院。
買い物。
行政手続き。
子育て支援。
新しい住まいは、
単に安い物件であればいいわけではありません。
そこで生活を続けられるか
という視点が重要になります。
安全性を確保しながら、
生活しやすい場所を考える。
これは、
通常の不動産仲介以上に、
福祉との連携が必要になる部分です。
居住支援法人は「避難後の生活」をつなぎます
不動産と福祉の間に立つ役割
私たち**ホームサポート(イエサポ)**は、
大阪府指定の居住支援法人として、
貝塚市・岸和田市をはじめ、
泉州地域で住まい相談に携わっています。
実際の支援では、
住まい探しだけでなく、
大家さんとの交渉。
保証会社との調整。
契約費用の相談。
生活保護申請への同行。
ライフライン手続き。
病院や相談支援専門員との連携。
見守り調整なども行っています。
私たちだけですべてを解決するのではありません。
必要な支援機関とつながりながら、
新しい生活を始めるための入口を一緒につくる
ことを大切にしています。
まとめ|逃げることと、暮らし直すことは両方必要です
DVから逃げるとき、
最も大切なのは安全です。
しかし、
その後には、
新しい生活が待っています。
住まい。
生活費。
仕事。
子育て。
医療。
福祉。
地域とのつながり。
だからこそ、
DVの住まい問題では、
「安全な場所へ逃げること」と、
「安心して暮らせる住まいをつくること」
を同時に考える必要があります。
そして、
支援を求めるのは、
家を出てからでなくても構いません。
「このままここに住み続けるのは危険かもしれない」
そう感じた段階から、
相談先につながることが大切です。
「これって相談していいのかな?」
と思われたら、
住まいを失ってからではなく、
住まいを失う前にご相談ください。
早い段階であればあるほど、
一緒に考えられる選択肢は広がります。
もしこの記事を読んで、
「このケースも相談できるかな?」
と思われた方は、
お気軽にお問い合わせください。
ご本人やご家族だけでなく、
社会福祉協議会、
行政、
相談支援専門員、
病院など、
支援に携わる方からの住まい相談も、
状況を整理するところから一緒に考えていきます。
次回予告|第12回
「生活保護を申請する前に家がない。住まいが先?生活保護が先?」
住まいがない。
所持金もほとんどない。
生活保護について相談したい。
しかし、
「住所がないと生活保護を申請できないのでは?」
と不安に思われる方もいます。
次回は、
生活保護申請前に住まいがないケースをテーマに、
住まいと福祉をどのようにつないでいくのか、
実際の居住支援の現場からお伝えします。
