第10回【イエサポ住まい支援コラム】

居住支援

長尾 祐太

筆者 長尾 祐太

不動産キャリア19年

【イエサポ住まい支援コラム】第10回

ゴミ屋敷になったら退去するしかない?

「片付けられない」の背景を知ることで、住まいを守れることがあります

前回の振り返り

第9回では、

「精神疾患があると賃貸住宅を断られる?」

というテーマを取り上げました。

住まい探しで大切なのは、

病名や属性だけを見ることではありません。

入居後に誰が関わるのか。

困ったときに誰へ相談できるのか。

医療や福祉とどのようにつながっているのか。

こうした支援体制を整えることが大切だとお伝えしました。

今回は、

「ゴミ屋敷」

について考えていきます。

ゴミ屋敷という言葉を聞くと、

「本人が片付けないから」

と思われるかもしれません。

しかし、

実際の居住支援の現場で向き合ってみると、

それだけでは説明できないケースがあります。


ゴミ屋敷になったら退去するしかない?

大切なのは「なぜこの状態になったのか」を見ることです

部屋にゴミがたまる。

近隣から苦情が出る。

家賃まで滞納する。

大家さんや管理会社からすると、

非常に深刻な問題です。

そのまま放置することはできません。

だからといって、

「ゴミを片付けない人だから退去」

だけで考えてしまうと、

問題の本質を見落とすことがあります。

私たちが大切だと考えているのは、

「なぜ片付けられなくなったのか」

「住まい以外にも困りごとはないか」

を見ることです。


実際にあった80代男性のケース

福祉サービスにつながっていても住まいを失うことがあります

実際に私たちが関わった、

80代男性のケースがあります。

この方は、

  • 生活保護を受給

  • 訪問介護を利用

  • ゴミ屋敷状態

  • 家賃を滞納

  • 退去寸前

という状況でした。

すでに介護サービスは入っていました。

つまり、

誰からも支援されていなかったわけではありません。

しかし、

家賃を滞納していることまでは把握されていませんでした。

ここに、

この事例から学ぶべき大きなポイントがあります。


「支援が入っているから大丈夫」とは限りません

支援ごとに見えているものが違います

訪問介護では、

日常生活や健康状態に関わる部分を支援します。

一方で、

大家さんや管理会社が把握しているのは、

家賃の支払い状況や、

近隣からの苦情、

建物や室内の問題です。

不動産会社には、

賃貸契約や退去に関する情報があります。

それぞれが本人を支えていても、

それぞれが持っている情報がつながっていなければ、問題が見えないことがあります。

今回のケースも、

介護サービスは利用していました。

それでも、

家賃滞納とゴミ屋敷の問題が進行し、

退去寸前まで状況が悪化していました。


ゴミ屋敷だけを片付けても終わりではありません

本当の問題が残れば、同じことが繰り返される可能性があります

部屋に大量のゴミがある。

そうなると、

最初に思いつく解決方法は、

「とにかく片付けること」

だと思います。

もちろん、

衛生面や近隣への影響を考えれば、

片付けは必要です。

しかし、

ゴミだけを運び出しても、

なぜその状態になったのかが分からなければ、

根本的な解決にはなりません。

家賃の支払いは管理できているのか。

生活全体に困りごとはないのか。

誰かに相談できているのか。

今の住まいで生活を続けられるのか。

こうしたことまで含めて、

考える必要があります。


このケースでは転居することになりました

住まいを変えることも生活再建の一つです

今回の80代男性については、

最終的に、

住居斡旋、転居、前住居の退去、ゴミ搬出

という流れで対応しました。

すべてのゴミ屋敷が、

今の住まいを維持できるわけではありません。

すでに問題が大きくなっている場合には、

新しい住まいへ移ることが、

生活を立て直すきっかけになる場合もあります。

大切なのは、

「退去になったから終わり」

にしないことです。

次の住まいで同じ問題を繰り返さないために、支援体制まで一緒に考えること。

そこまで考えて、

初めて生活再建につながります。


この事例で一番感じたこと

誰かが悪かったわけではありません

このケースを振り返ったとき、

私たちが強く感じたことがあります。

誰かが悪かったわけではありません。

本人だけを責めても解決しません。

介護の支援者が悪かったわけでもありません。

大家さんが悪かったわけでもありません。

一番の問題は、

必要な情報がつながっていなかったことでした。

もし、

家賃滞納が始まった段階で、

その情報が支援者へ伝わっていたら。

部屋の状態が悪化し始めた段階で、

関係者が一緒に考えられていたら。

違う選択肢があった可能性もあります。


「家賃滞納」は住まいを失うサインです

ゴミ屋敷になる前にも、小さな変化があります

講演でも、

「家賃滞納は、住まいを失うサインです」

とお伝えしました。

家賃滞納。

退去通知。

保証人の問題。

こうした状況は、

住まいを失ってからではなく、

住まいを失うリスクがある段階で相談できます。

ゴミ屋敷も同じです。

「まだ部屋には入れるから」

「本人は生活できているから」

と様子を見ているうちに、

問題が大きくなる場合があります。


支援者の方に気付いてほしい「住まいの変化」

少し違和感を感じた段階で相談して構いません

社会福祉協議会、

ケアマネジャー、

地域包括支援センター、

相談支援専門員、

病院のMSWなど、

日常的に本人と関わる方だからこそ、

気付けることがあります。

例えば、

以前より部屋に物が増えている。

郵便物がたまっている。

家賃の話になると説明が曖昧になる。

大家さんや管理会社から連絡が来ている。

本人が住まいについて不安を話している。

こうした変化があれば、

「まだ退去になっていないから大丈夫」

ではなく、

住まいの問題が始まっている可能性

も考えてみてください。

講演資料でも、

「ゴミ屋敷になっている」という段階で、

居住支援へ相談していただいて構わないとお伝えしています。


大家さんや管理会社も一人で抱え込まないでください

居住支援は借主だけを守るものではありません

ゴミ屋敷の問題では、

大家さんや管理会社にも大きな負担がかかります。

家賃が入らない。

近隣住民から苦情が来る。

室内の状態が悪化する。

本人へ連絡しても、

状況が改善しない。

こうした状態を、

大家さんだけに抱えてもらうことが、

居住支援ではありません。

本人への支援が必要なのか。

行政や福祉につなげられないか。

転居を含めて考える必要があるのか。

貸す側と借りる側の両方の状況を整理すること

が必要です。


不動産と福祉をつなぐことが必要です

住まいの問題は、一つの専門職だけでは解決できません

ゴミ屋敷や家賃滞納は、

一見すると不動産問題に見えます。

しかし、

その背景に生活上の問題があれば、

福祉との連携が必要です。

反対に、

福祉サービスが入っていても、

家賃滞納や退去の問題は、

福祉だけでは解決できないことがあります。

だからこそ、

不動産と福祉の間をつなぐ役割が必要です。

私たち**ホームサポート(イエサポ)**は、

大阪府指定の居住支援法人として、

貝塚市・岸和田市をはじめとした泉州地域で、

住まい相談に携わっています。

実際の支援では、

住まい探しだけでなく、

大家さんや保証会社との調整、

生活保護申請への同行、

病院や相談支援専門員との連携、

見守り調整なども行っています。


住宅セーフティネット制度は「住まいを失った人」だけのものではありません

住宅セーフティネット制度や、

居住支援法人の支援は、

ホームレス状態になってから利用するもの、

と思われることがあります。

しかし、

そうではありません。

家賃滞納が始まった。

退去を求められている。

部屋がゴミ屋敷になってきた。

このような、

住まいを失うリスクが見え始めた段階

から相談できます。

むしろ、

私たちはその段階で相談していただきたいと考えています。


まとめ|ゴミ屋敷は「片付けの問題」だけではありません

ゴミ屋敷という状態だけを見ると、

「本人が片付ければいい」

と思ってしまうかもしれません。

しかし、

現場では、

その背景に生活上の問題が隠れているケースがあります。

今回紹介した80代男性も、

生活保護を受給し、

訪問介護を利用していました。

それでも、

ゴミ屋敷と家賃滞納が進み、

退去寸前まで状況が悪化していました。

このケースが教えてくれたことは、

支援があることと、支援がつながっていることは違う

ということです。

住まい。

介護。

福祉。

不動産。

大家さん。

それぞれが持っている情報をつなぐことで、

住まいを失う前にできることがあります。


「これって相談していいのかな?」

と思われたら、

住まいを失ってからではなく、

住まいを失う前にご相談ください。

早い段階であればあるほど、

一緒に考えられる選択肢は広がります。

もしこの記事を読んで、

「このケースも相談できるかな?」

と思われた方は、

お気軽にお問い合わせください。

ご本人やご家族だけでなく、

社会福祉協議会、

ケアマネジャー、

地域包括支援センター、

相談支援専門員、

大家さんや管理会社など、

支援に関わる方からの住まい相談も、

状況を整理するところから一緒に考えていきます。


次回予告|第11回

「DVで家を出たい。でも行くところがない。住まいと安全をどう確保する?」

DVから逃れたい。

しかし、

所持金がない。

保証人がいない。

すぐに入れる住まいもない。

そんなとき、

安全の確保と住まい探しを、

別々に考えることはできません。

次回は、

実際に支援したDV母子世帯の事例をもとに、

「安全な場所へ逃げること」と「その後の暮らしをつくること」

についてお伝えします。

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